五所川原市立図書館からあれこれ

3冊の同じ本(bR0)

 先日、寄贈していただいた本の中に、歴史小説の全集があったのですが、9巻が3冊あ
りました。同じ本を2冊なら自分でも持っています。買ったことをすっかり忘れてまた買
ったのです。特に旅先などで、急に読み物が必要になったときなどあせって買うからでし
ょうか。でも、2冊がいいとこでしょう。3回同じ本を買ったことはないと思います。
 不思議だなとふと思いました。日常の小さな謎ですね。それでちょっと想像をたくまし
くしてしまいました。ここからは私の妄想です。

 彼は歴史小説が好きで、結構マニアでした。仕事を終えてから深夜一人、読書を楽しん
でいました。子どもたちはそういう父を見て育ちました。やがて、大人になり、一人ずつ
独立したり、結婚したりしていなくなりました。老人になった彼は体調を崩し、入院しま
した。子どもたちが交互にお見舞いに帰ってきました。3人ともお父さんが本好きなこと
を知っています。しかも、いつの時代の誰がごひいきかも知っています。たまたま、その
シリーズの9巻が出たばかりでした。
 最初にやってきた長男がまず、その本を持ってきました。「ありがとう、まだ買ってい
なかったんだよ。病院で楽しんで読むからね」父親はうれしそうに言いました。長男は仕
事が忙しいということで、帰っていきました。次の日、次女が来ました。彼女も同じ9巻
を持ってきました。長男からもらった本は、まだベッドの下にしまってありました。「あ
りがとう、欲しかった巻だよ。よく気がついたね」彼は微笑みながら言いました。次女も
小さい子どもを残しているので、すぐ帰りました。3日目に来た長女は遠方からやっと着
きました。夫が持たせてよこした9巻を持ってきました。「ありがとう、お前のだんな様
はいい人だね。私の好みをよく覚えていてくれて」彼は心からお礼を言いました。前の2
冊は大事に包まれてベッドの下にしまってありました。
 彼は病院でその本を読みましたが、残りの2冊もちゃんと持って帰りました。少しずつ、
3冊の本を全部読んだかもしれませんね。3冊の本は彼の書斎の本棚に並べて飾られてい
ました。彼が亡くなるまで、ずっと。

 亡くなられた方の蔵書だとお聞きしましたので、つい・・・。もちろん、これはすべて
フィクションです。くださった方、どうぞお許しください。
 (ちなみにいただいた全集は、当館の同じ全集が古びてきたので、差し替えに使わせて
いただきました)



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